ゴシップ
著者のローマ人の物語とは違って,遊びで書かれたお話.歴史上の偉人の「傍にいた人」から見た偉人の人物像.信憑性はさて置き面白い.息抜きにはもってこいの一冊.
噂話の気楽さで
地中海周辺の有名人物についての目撃談。…なしつらえの短編集。結構お遊び色強いです。『我輩は馬である』などと語りだす馬が出てくるくらいです。カリグラ帝の馬で、彼は称号や家まで与えられた歴史に名だたる馬らしいです。知らなかったですが。何でそんなことになったのか、そうしてどうなるのか、興味いっぱいでひっぱられました。知ってたら知ってたで「そうするか!」という上手さがあると思います。残念ながら私のお知り合いはイスカリオテのユダくらいでしたが。なるほど子を見れば母が見えるものかもしれません。 表題のサロメは、淫婦か、あるいは無垢な印象で描かれることが多いように思います。この作品中のサロメははつらつと賢く、自ら考え自ら動き自らつかみます。大変素敵。距離もぐんと身近です。 サロメの乳母が語るのは「うちのお嬢さん」であって、聖書の中に出てくる淫靡な娘ではないのです。キリストの弟が見る兄は「どうにも困った人」だし、ダンテの妻の目の前には生活がぶら下がっている。 彼らは教科書の中にだけ存在する幻ではなく、この世界にあるどこかの場所、どこかの時代に、生まれて生活して悩んで喜んでそうやってただ生きていただけの人たちだったのかもしれません。 面白かったです。
歴史に興味を・・・
この作品を読んで、ヨーロッパへの興味が 沸きました。 歴史書として読むなら、「ローマ人の物語」は最高に読みやすいですが、 楽しく歴史を紐解く上で、こう言った遊び心は不可欠だと想います。 客観的でありながら、女性らしさを残した文体が、より一層 好奇心をくすぐります。 実在の人物を元に、周囲をとりまく人間関係や感情を 旨く表現できている。とても面白い作品です。
ニヤリ入門。
社会情勢に頭をお抱えのそこのあなた。 歴史ものなんてわかんねーとお考えのあなた。 ライトノベルに飽きてきたあなた。 そんなあなたにニヤリとしていただける名著でございます。 「ローマ人の物語」などのお堅い歴史ものの印象が強い塩野七生さんでございますが、ニセの史料を遊びで挿入してみたり、かなり「ふまじめ」な作家さんでもあります。 今作は「ふまじめ」大爆発。しかもその「ふまじめ」が塩野流の「リアル」で装飾されているものだからたちが悪い。 時には納得、時にはニヤリ、時には唖然、塩野流「Wonderland」でございます。
完成された物語を、全くの他人の目から見てみると
既に物語として完成されているものを、全く別の視点から組み立てるとこうなるのか。 誰が、キリストの生涯に突っ込みを入れるだろうか。 多くの歴史書で非難されまくっている皇帝ネロに裏話があるなんて。 貞女なんて、夫に対する恨みと愚痴の固まりである。 なんだか、週刊誌ふうの、裏話たち。 それでも読めてしまうのは、歴史上・物語上の主人公の最も近くにいた他人の、全く違った話だからだ。 「神の子」キリストが、肉親への愛情というものが全く欠けていた人物であったことが、最も心に残った。 完全無欠に語られるものがほとんどであるから、そうでない話があること自体、珍しい。 物語中のキリストは、どこかの某カルト教祖と共通して、我が儘で自分本位、ある種の感情が全く抜け落ちている。 そういった意味では、「神の子」であり、人間性がない。 この視点には、うなってしまう。
新潮社
愛の年代記 (新潮文庫) イタリア遺聞 (新潮文庫) 黄金のローマ―法王庁殺人事件 (朝日文芸文庫) 緋色のヴェネツィア―聖(サン)マルコ殺人事件 (朝日文芸文庫) 銀色のフィレンツェ―メディチ家殺人事件 (朝日文芸文庫)
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